古くならずに深くなる〜郷愁を漂わせる洋館へ想いと 愛着のあるオウチStoryをお伺いしました。

 

閑静な住宅街の一角に、コンクリート打ちっ放しの家があります。伺ったとき、玄関前ではご主人の箭内(やない)孝さんが雪かきの真っ最中。「どうぞ、どうぞ」と、笑顔で迎えてくれました。箭内孝さん、晶子さんご夫婦は、ひとつひとつ創り上げていくタイプの家をつくりたいという希望を持っていらっしゃり、ずっと以前からHOPに興味を持っていたそうです。「勇気を出してモデルハウスを訪ねたら、すっかり気に入ってしまって。『惚れ込んだ』という感じでした」と晶子さんは言います。

数年前に東京からUターンで札幌に戻ったお二人。東京では、孝さんはコンピュータグラフィックス、晶子さんはグラフィックと、お二人ともデザイナーとして活躍されていました。家づくりに対しても、デザインにはひとかたならぬこだわりがあったようです。 ダイニングから2階へと続く吹き抜けの階段もそのひとつ。1階と2階の空間のつながりが開放感を生み、天井でさえぎられていないことから明るい自然光がたっぷりと差し込んでいます。 小学校に通う長女の祥子ちゃんと長男の恒奎(こうき)君が2階のフリースペースで遊んでいても、「何をしているのかが手に取るように分かるので安心」と、晶子さんは言います。 玄関からリビングに向かう途中、吹き抜けの階段を見上げると、ピカソの書いた「ゲルニカ」が目に入ります。これは、やはりアーティストであるお二人ならではのセンスです。 「僕たちは、絵の趣味は全く違うんですよ。僕はキリコが好きだけど、妻はミロがいい、とか。でもそれは表現方法が違うだけで、ぶつかり合うものではないんですね」と孝さん。

2階のフリースペースでは、祥子ちゃんと恒奎くんがバイオリンの練習したり、孝さんと晶子さんがパソコンを使ったり。思い思いの時間を過ごす。

ロフトスペースは孝さんお気に入りの場所。「ここから窓見ると、藻岩山しか目に入らないんです。誰にもじゃまされず、のんびり読書ができる。隠れ家のような場所ですね」

「この家のリビングには近代的で抽象的な絵がしっくりくるはず、カンディンスキーなんかがいいんじゃない」、がお二人共通の意見なのだそうです。 藻岩山が一望できる屋根裏部屋(ロフトルーム)や、凝ったデザインの洗面台、ダイニングにどっしりと置かれたテーブルなど、孝さんと晶子さんの美意識がいたる所に生かされた家。 「ステキな家ねって言いたいけれど、この家は”楽しい家”ね」ご自宅を訪ねてこられた晶子さんの友人は、こんな風に表現してくれたそうです。洋服や持ち物でなく、「家」がライフスタイルそのものを表すのが理想だというお二人。 芸術を愛するご夫婦だからこそ、家づくりもじっくりと年月をかけてひとつの作品に仕上げていくのでしょう。

内玄関の床には、祥子ちゃんと恒奎くんのアイディアでビー玉を埋め込んでいる。箭内さんファミリーだけでなく、建築に携わった人たちも記念にと、この作業に参加した。

将来は「家は飾り立てるのではなく、僕たちと同じように自然体で、10年、20年後に風格が出てくればいい」(孝さん)、「無垢の木の風合いが年月と共に枯れていって、味が出てくるのが楽しみ」(晶子さん)、と家に対する考え方も一致している。

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