工事中のようすやホームページなどで見た作品に共感をいただき、当初からHOPに依頼しようと考えていたと、嬉しいお言葉を聞かせてくださった原様。その住まいが建つのはご主人が生まれ育った場所です。
札幌の中心部にほど近い、市街地の一角に原様ファミリーの住まいはあります。
「ここは、私の故郷なんです」と話すご主人の表情には、心から落ち着ける場所に戻ってきたという、ホッとする思いが漂っているようです。すぐ近くには、原様のおじいさまが創業した農産種子の生産・卸会社があり、ご主人は三代目として経営を担っています。
東京の大学を卒業後、大手エレクトロニクスメーカーのエンジニアとして働いていた原様。10年ほど経った頃、北海道の大地が頭に浮かぶようになったのだといいます。そして帰郷。そんな時、二代目であるお父様が体調を崩され、会社を継ぐことになります。
「しっかり跡を継いで欲しいと言われていたのだと、そんな気がします」
一からすべてを学び、会社を切り盛りして8年。二人のお子様がそれぞれ中学生、小学校中学年になり、ある程度自立できるようになったこと、借地としていた部分の契約が終了したことを機に、具体的な住まいづくりの計画がスタートしました。
庭をつくりたい。それが、原様ご夫妻が最初に希望されたことでした。それまでの借家でも、奥様が造詣の深いガーデニングをともに手がけていました。その経験もふまえ、室内から気軽に出られ、手入れや鑑賞ができるガーデニングスペースが第一の希望でした。
そこでテーマとなったのが、家の内と外をどう連続させるかということ。そこで、設計担当がご提案したのが、大きなサッシを開け放つことで自然に外へと出られる仕掛け。2層吹き抜けの開放感あふれるリビングから、大きな板張りのテラスへ、そして庭へと緩やかに繋がっていきます。
「夕刻になると、ビールを片手によく庭に出るんです」とご主人。奥様は「いつでも気軽に木々や草花の手入れができるのがいいですね。家中どこからでも、バスルームからも庭を眺められるのもうれしい!」。
また、玄関脇には1年草を植えるスペースが設けられ、毎年、新たな色彩でゲストや通りかかる人々に安らぎを与えています。
いつも家族同士で〝気配〟と温もりを感じていたい。原様ご夫妻のそんな思いをカタチにすることもテーマとなりました。
階段を上ると現われる、大きなモニターとサラウンドのオーディオシステムが置かれたスペース。ここはもともと、ご主人専用の書斎となる予定でした。しかし「書斎にこもっていることが、どれくらいあるのだろう?」ご主人はそう考えるようになったといいます。そんな思いを汲み、設計担当がご提案したのがオープンなスペースでした。
反対側は、リビングの吹き抜けに向かってカウンターが造り付けられており、映画やオーディオを大音量で愉しんでいると、それはリビングまで聞こえてきます。でも、まったく気にならないといいます。「それよりも、家族の存在をお互いに意識できるのはいいものだと、暮らし始めて感じましたね」
リビングの脇には、隠れ場所を意味するヌックと呼ばれる空間があります。正面には暖炉、床はリビングよりも下げられ、奥様がこだわった絶妙な色合いのカーペットが敷かれています。「子どもたちが隅っこで音楽を聴いたり、ゲームをしたり。私たちの近くにいることが増えましたね」と奥様は話します。
庭、オーディオスペース、ヌック。どれもリビングと連続していますが、それぞれ個性をもった〝居場所〟となっているので、どこにいても落ち着きがあり、家族のようすが感じられる住まいとなりました。
グレーの壁を基調とした、モノトーンのイメージ。これも、原様ファミリーの住まいの特徴です。当初は、真っ白な壁に木の色合いを生かしたデザインでしたが、「HOPさんの作品の一つにあった、質感のあるグレーの壁がしっくりくるように思えたんです」とは奥様。家づくりの最終段階に差しかかっていましたが、「思い切って相談すると快諾いただけて。そこから細かな調整などを経て、この家は完成したんです」
外壁も同じトーンのグレー。それは、この環境に時とともになじんでいく〝自然な色合い〟を選択した結果でもあります。外壁の色を見て全幅の信頼を感じていただいたという奥様。それ以降、完成まで現場に足を運ばなかったそうです。
「引き渡しの日、家内は大粒の涙を見せて感動し、心からホッとした表情を見せたものでした」とご主人は振り返ります。
場所への思いと家族への思い。それらが一つになり、心から安らいで暮らされているようすが伝わってくる、温かなオウチStoryでした。